2021年2月15日 一般質問

おばた健太郎 議員  通告に従いまして、民主クラブの一般質問を行います。
 初めに、新型コロナウイルス感染症対策について伺います。
 現在の緊急事態宣言下で、感染者数自体は減少傾向にあるものの、まだまだ予断を許さない状況です。これまで1年以上にわたる新型コロナウイルスは様々なところに影響を及ぼしておりますが、特に打撃を受けている経済活動を一刻も早く元どおりにするため、引き続き可能な限り注力していただけるよう要望いたします。
 PCR検査センターについて伺います。
 板橋区ではPCR検査センターを昨年4月28日に設置、5月8日から運用を開始しておりますが、9か月たった現在は、週平均10件程度の検査数と伺っております。PCR検査は民間の医療機関等でも広まってきておりますが、今後も公的機関である板橋区のPCR検査センターを積極的に活用すべきと考えます。
 そこで伺いますが、板橋区新型コロナウイルスPCR検査センターの現状について、認識を伺います。
 PCR検査センターの運用を委託している板橋区医師会に検査の現状と改善点を伺ってまいりました。医師会のお話によれば、現在は、検査の際、全ての方に検査室まで移動してもらっており、そのため、例えば足の悪い方であっても、補助スタッフの介助を受けながら歩くため、時間と手間がかかっているとのことでした。私も一部、現地を確認してきましたが、ちょうどバスなどの大型車両がそのまま入れる広い屋根のある広場があり、検査を受ける方々が大型バスでその場所に乗りつけ、医師がバス内で唾液等を採取すれば、お年寄りが移動する手間も省けるのではないかと提案をいただきました。PCR検査センターの入り口で検査する、バスの中で採取する等の方法を提案いたしますが、いかがでしょうか。
 次に、ワクチン接種について伺います。
 今、多くの国民がワクチンに期待を寄せていると思います。新型コロナワクチンは90%以上の感染防止効果があるとされ、世界各国でワクチン接種が進んでいる状況です。日本においては、昨日初めて国内でのワクチン承認がなされましたが、政府はいまだに供給量や接種の見通しを明確に伝えることができておらず、不安が高まっております。こうした困難な状況の中、ワクチン接種体制をいち早く確立し、実施できるよう準備を整えなければなりません。板橋区のワクチン接種に対して、遅滞なく実施するよう万全の対策を取っていただくことを要望いたします。区長の決意をお聞かせください。
 次に、接種方法について伺います。
 現在、集団接種会場を五つ設けるほか、区内医療機関にも協力を要請し、全区民の70%が2回接種する想定での準備が進められております。集団接種会場についてはコールセンターへの電話とインターネット予約の二つの方法があり、各医療機関は、それぞれの予約方法に従い予約することとなっていますが、もし、通い慣れた病院で接種しようとしたときに、例えば、その病院が1日の接種できる人数が少なかった場合、電話がつながらない、予約が取れないなどの事態が発生することが懸念されます。また、副反応が起きたときなどには、ふだん行き慣れているかかりつけ医との連携も必須です。お隣の練馬区のように、早くて近くて安心をコンセプトとしたかかりつけ医による接種を目指すことが、多くの区民にとっても安心感を得られることになるのではないでしょうか。その観点から考慮すると、区施設会場と、それぞれのかかりつけ医との接種に関する情報連携が速やかに行われる体制になっているべきであり、そのためには二つの予約システムで区施設会場と各病院を一括管理するほうが情報連携も円滑に行われ、混乱も少なくなると思われます。
 そこで伺いますが、ワクチン予約については、区全体で一括の予約システムとするべきだと考えますが、見解を伺います。また、副反応が出た際、速やかに対処できるよう、かかりつけ医との情報連携、データの共有が必要となりますが、どのように対処するのでしょうか、伺います。
 この項の最後に、ワクチン接種率について伺います。
 世論調査によると、約3割の方が新型コロナワクチンの接種を希望しないと回答しています。副反応に対する懸念やワクチンの安全性など、接種に前向きでない方々の意見も理解できますが、一方で新型コロナウイルスを終息に向かわせるには多くの方にワクチンを接種していただき、集団免疫を獲得することが現時点では有効な方法であることは否めません。
 そこで伺いますが、ワクチン接種に懸念を示す方々への呼びかけ、対策について、どのようにしていくのか、お示しください。
 次に、子ども養育支援について伺います。
 言うまでもなく子どもは社会の宝であり、子どもの養育支援は区としても欠かすことのできない重要政策です。近年は1人で子どもを育てられている親御さんも増えていますが、ひとり親家庭であっても、子を慈しみ、安心して育てられる環境を整えていかなければならないのは間違いありません。離婚や別居といった選択はそれぞれのご家庭の判断であり、どちらを選択するべきということではありませんが、子どものために何ができるかを根本に考える必要があります。その上で、離婚に至る前の段階、または離婚という選択をした場合に備えた初期段階のサポートが重要であると考えます。
 離婚に関する諸外国の状況を見てみますと、アメリカ、カナダ、ドイツなどは裁判離婚制度であり、家庭裁判所において養育費の分担や子どもとの面会交流について合意し、それらを養育計画書として提出する義務があります。また、養育に関する親教育ガイダンスの受講が必要で、離婚をしても両方が親として養育に当たることになっています。
 韓国では、公的機関を通さずに離婚できる協議離婚制度の改革が2008年に行われ、本当に離婚するかどうか、子どもがいる場合は3か月、いない場合は1か月の間、一歩踏みとどまって考える熟慮期間が設けられました。一方、日本においては単独親権と協議離婚が軸となっているため、多くの離婚において子どもの利益の具体的な検討の機会がなく、結果として、社会通念を反映した母親優先の単独親権指定は、離婚後の父親との断絶やシングルマザーによる子育て負担、母子家庭の貧困を招いています。
 離婚に関する制度については、国の活発な議論を期待しておりますが、国民にとって様々な相談や手続を行う窓口となるのは基礎自治体であり、現行制度の中で、区としても、子どものためにできることを模索していかなければなりません。
 そこで伺います。まずは現在の板橋区の子ども養育支援についての認識を伺います。
 子ども養育分野で先進的な取組を行っているのが兵庫県明石市です。明石市では、子どもを中心に考えるという視点の下、様々な対策を行っております。ふだん一緒に過ごしていない親と子どもが交流するこどもと親の交流ノート事業や、明石市立天文科学館を親子の面会交流の場として提供する親子交流サポート事業、諸外国の親教育ガイダンスに当たる離婚前講座などに取り組み、また、面会交流コーディネート事業として、交流日程の連絡調整サポートも行っております。さらに、養育費取り決めサポート事業として、公正証書の書類作成支援、裁判所の手続アドバイス、公正証書の作成に係る費用補助なども実施しております。
 東京23区では、港区で面会交流コーディネート事業の実施や、面会交流の場所として児童館を提供しており、父親もしくは母親は、公的機関が提供する安心できる場所で面会交流を行っております。
 板橋区においては、男女平等推進センターや区民相談室、福祉事務所などで相談事業を行っていて、また、東京都の面会交流事業はあとを紹介していることは認識しております。しかし、現場の声を伺うと、基礎自治体にはもう一歩踏み込んだ対応が期待されており、今まで以上に積極的な対応をする必要があると考えます。
 そこで伺います。板橋区においても面会交流コーディネート事業の実施と、面会交流を安心して行える場所の提供及び養育費取り決めサポート事業など、一歩踏み込んだ相談体制を求めますが、見解を伺います。
 次に、職員のスキルアップ体制について伺います。
 現在、板橋区では法務省作成の子ども養育に関する合意書作成の手引とQ&Aの冊子を離婚届の提出の際に渡しているとのことですが、離婚届を出す時点ではもう遅く、その手前の段階で、別の角度からの寄り添ったサポートが必要であると考えます。
 先日、池袋にある養育費相談支援センターと家庭問題情報センターに赴き、現状について伺ってまいりました。事務局長の鶴岡さんは、「離婚を選択した当事者は相手への対応、子育て、求職活動などで心身ともに疲弊しており、選択した後では、さらに関係がこじれてしまうことが多い。こじれる前の初期段階での相談体制の構築が重要であり、センターの目的の一つは、専門知識をしっかりと持った人をできるだけ多くつくること、という認識の下、初期対応の研修を随時行っている」とのことでした。このような意見も参考に、区民にとっての窓口である区役所職員のスキルアップを図るべきだと考えます。
 そこで伺いますが、職員に向けた窓口の初期対応のノウハウを伝えるガイダンス研修を行うべきだと思いますが、見解を伺います。
 最後に、コグニティブトレーニングについて伺います。
 ケーキの切れない非行少年たちという本をご存じでしょうか。医学博士で、現在、立命館大学教授の宮口幸治さんが2019年7月に発行した新書ですが、累計65万部以上発行しており、漫画化もされている一冊です。
 宮口さんは少年院に法務医として勤めていく中で、非行少年たちは凶暴で手に負えない少年ではなく、実はケーキを3等分に切ることもできない認知機能が著しく低い子どもたちで、そのことを小・中学校で気づかれずに過ごしてきたという事実にたどり着きました。宮口さんの分析では、非行少年に共通する特徴として、見たり聞いたり想像したりする力である認知機能の弱さ、感情を抑制できない感情統制の弱さ、一つの考えに固執する融通の利かなさ、不適切な自己評価、対人スキルの乏しさ、身体的不器用さの六つの特徴があるとされています。こういった学校にも気づかれない、社会でも気づかれない、しかし、どこか生きづらい、思うように生きられないと感じている子は学校の1クラスに5人はいるとのことで、その数は社会全体で考えると決して少ない数ではありません。こういった方たちに対する認知機能のトレーニングとして開発されたものがコグニティブトレーニング、通称、コグトレです。
 そこで伺います。まずはコグニティブトレーニングについての教育委員会の認識を伺います。
 板橋区においては、ステップアップ教室や特別支援学級で認知行動療法に基づいたリハビリテーション技法であるソーシャルスキルトレーニングを行っていると伺っております。しかし、例えば1クラスに5人程度の子どもが何らかの認知に対するハンディキャップを負っていると仮定するならば、ステップアップ教室などの実施だけではなく、むしろ普通級でこそコグトレを行うべきではないでしょうか。普通級に通いながらも生きづらさを感じていたり、コミュニケーションが苦手など、困難を抱えていたりする児童・生徒が一定数はおり、そういった子どもたちへの助けが必要だと考えます。
 宮口さんが提唱したコグトレを実際に実施している中学校、小学校は全国に数校あり、私は直接それらの学校にヒアリングを行いました。
 茨城県の桜川市立桜川中学校では、全員が毎朝10分間、コグトレを行っているとのことでした。富山県氷見市立宮田小学校では、週に1回、朝の15分間、国語の授業という位置づけで、2年生から6年生までコグトレを実施しております。両校とも1年間実施したとのことですが、その効果は驚くべきものだったとのことです。
 具体的には、人の話を聞こうとする意識が芽生えた、生徒の意識が前向きになった、メモを取るようになったなどの効果が現れ、また、相手のことを考えて行動できるようになったとのことでした。1日10分から15分間のトレーニングで学習の土台をつくり、社会性を高めることに成功した一つの好例だと思われます。
 そして、お話を伺った中で私が最も重要だと思った点は、教員側にも大きな発見があったということです。コグトレの中には、人間が様々な表情をしている場面の絵を生徒に見せて、この人は今どんな気持ちでしょうかと、表情や場面から、その絵に描かれてある人間の気持ちを想像するトレーニングがあります。桜川中の先生は、生徒の1人がこの問題につまずいていることに気がつき、そこからその生徒に対する認識を改め、アプローチの仕方や説明の仕方を変えたというのです。経験の浅い教員から見ると、怠けているのではないか、ばかにしているのではないか、真剣に取り組んでいないのではないかというふうに見えた児童・生徒が、実は認知機能不足に悩んでいたという事実に気がつくきっかけになったということになります。
 板橋区のステップアップ教室への入室は、学級担任等の気づき、もしくは保護者からの相談が入り口です。ということは、気がついてもらえなければ支援にはつながらないのです。児童・生徒全員に実施することで、その子どもが抱えている問題に素早く気づくことができる体制になると考えます。
 来年度からは全児童・生徒にタブレットが配布されます。コグトレのアプリも開発されており、端末でコグトレを活用することも可能です。
 そこで伺います。板橋区の全小・中学校で、コグトレをぜひ導入すべきと思いますが、見解を伺います。
 以上で私の一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手する人あり)

◎区長(坂本健君) 議長、区長。

○議長(元山芳行議員) 区長。
     〔区長(坂本 健君)登壇〕

◎区長(坂本健君) それでは、おばた健太郎議員の一般質問にお答えいたします。
 最初はPCRセンターの現状についてのご質問であります。
 板橋区PCRセンターは、検査ができるところが限られていた時期に検査数を増やすことに大いに貢献をし、本年2月5日までに378件の検査を行ってまいりました。昨年秋、国が検査体制を緩和したため、現在は多くの医療機関で検査が可能となっております。板橋区内では100か所以上の医療機関においてPCR検査等を実施しておりまして、今年1月の1か月間の検査総数は約2万5,000件程度となっております。今後の板橋区PCRセンターの運用につきましては、感染状況のほか、ワクチンの接種状況も踏まえながら判断をしてまいりたいと考えています。
 次は、PCR検査の方法についてのご質問であります。
 板橋区PCRセンターでは、来所者の接触を少なくしているため、1度に多くの人が一緒に来所することは考えていないところであります。PCRの検査に用いることができる検体の種類が増え、唾液検体は自己採取が可能であるため、PCRセンターに来所しなくても検査ができるようになってきております。新型コロナの検査方法は、これからも増えていくと思われますので、検査を受ける人の負担が少ない方法で実施ができるよう、関係機関と協議をしながら検討を進めていきたいと考えています。
 次は、ワクチン接種の実施についてのご質問であります。
 新型コロナウイルス感染症による多くの制約が緩和されるためには、ワクチン接種が順調に進むことが必要であると考えます。区では、現在、4月初旬に開始が見込まれております高齢者の予防接種に向けて、組織体制を整え、準備を進めております。様々な課題はございますが、接種開始までにあらゆる事態を想定し、万全の準備をするよう、全力で取り組んでいく考えであります。
 次は、ワクチン接種の予約についてのご質問であります。
 ワクチン接種の予約につきまして、区では現在、区施設会場等で行う集団接種の予約をコールセンターやワクチン接種予約システムにおいて対応する予定で準備を進めております。診療所等での個別接種につきましては、各診療所で受け付けていただく方向でありますが、区全体の予約の把握につきましては、重要な課題であるとも認識をしております。今後は、各医療機関と連携をしながら、全体が把握でき、区民が利用しやすい予約体制を検討していきたいと考えています。
 次は、副反応への対応についてのご質問であります。
 各会場におきましては、接種後の経過観察の場所を用意し、看護師等を配置するなどして、副反応の発生に対応できる体制を整える予定であります。医療機関での接種において副反応が見られた場合には、医療機関から保健所へ報告していただく予定であります。深刻な被害が生じた場合は、国や東京都と連携をして対応していきたいとも考えています。
 次は、接種の呼びかけについてのご質問であります。
 区では、ホームページで、コロナワクチンに関する情報の周知を開始しております。3月中旬以降には、高齢者へ向け個別に接種票を送付するとともに、広報の特集号を全戸配布することによりまして、接種を勧奨していく予定であります。情報を速やかに周知することにより、懸念の軽減につなげ、接種を選んでいただけるように努めていきたいと考えています。
 次は、板橋区の子ども養育支援についてのご質問であります。
 離婚に際し、親同士の意向調整や合意形成が困難である場合には、子どもにとって最善の利益を目指すことが必要であると考えます。区では男女平等推進センターや福祉事務所の総合相談と区民相談において、離婚や家庭内の問題などについて相談を受けているところであります。区民に身近な窓口での相談を糸口に、関係部署が連携し、離婚前の段階から法律相談など適切な支援につなげることが重要であるとも考えています。
 次は、面会交流と養育費についてのご質問であります。
 親の離婚後に面会交流が適切に実施されることや養育費が確実に支払われることは、子どもたちの健やかな成長と、その未来のために重要であると考えます。区におきましても、子どもたちの最大の利益を実現すべく、各部署が連携して相談と支援を行っておりまして、必要に応じて専門支援機関につなげて問題解決に取り組んでいるところであります。他自治体による支援事業の事例と、法務省が行っている養育費の不払い解消に向けた調査・研究の動向を注視し、区としての支援策について研究していきたいと考えています。
 次は、職員のスキルアップ体制についてのご質問で、最後のご質問であります。
 各窓口におきまして、職員が相談者の思いに適切に応えられるよう、専門分野に関する研修会の実施や関係部署による情報共有への取組が重要となると考えます。家庭裁判所の調停委員経験者等の専門的な知見と、専門機関の研修等の情報を関係部署で共有し、相談体制を充実していきたいと考えています。
 残りました教育委員会に関する答弁は教育長から行います。

◎教育長(中川修一君) 議長、教育長。

○議長(元山芳行議員) 教育長。
     〔教育長(中川修一君)登壇〕

◎教育長(中川修一君) それでは、おばた健太郎議員の教育委員会に関する一般質問にお答えします。
 初めに、コグニティブトレーニングの認識についてのご質問ですが、コグニティブトレーニングにつきましては、認知トレーニングを通して、学習面、社会面、身体面の3方面から困っている子どもたちの支援を行うものと理解しております。教育委員会では、認知機能において、学習面や生活面に困難を生じている児童・生徒に対しましては、早期に発見し、課題解決に向けて適切な支援をすることが重要であると認識しております。
 次に、コグニティブトレーニングの導入についてのご質問ですが、学校では、道徳の時間においては、役割演技を通して相手の気持ちを理解したり、保健の学習においては、自己の感情をコントロールする方法を学んだりするなど、教育活動全体を通して認知機能を高める取組を実施しているところです。コグニティブトレーニングの導入につきましては、まだ歴史も浅く実践例も少ないことから、今後、研究してまいりたいと思います。
 頂きました教育に関する質問の答弁は以上でございます。